『いろいろ1ねん』
レオ・レオーニ 作・絵
谷川俊太郎 訳
あすなろ書房
新年、明けましておめでとうございます。
今年も、絵本コラムをよろしくお願いします。
さて、1年のはじまりの一冊として、
以前からずっと紹介したいと思っていた絵本があります。
それは、レオ・レオーニ著「いろいろ1ねん」です。
なんといっても、この細長いかたちがいいですよね。
インテリアにも映えそうです。
レオ・レオーニさんは、日本でも人気の高い絵本作家です。
オランダ生まれで、アメリカとイタリアに在住。
新聞社勤務やデザイナー・アートディレクター、編集者、美術教師などの仕事を歴任し
40代後半の頃、孫のためにつくった絵本が人気を博し、
そのまま絵本作家になったという経歴も素敵だと思います。
「スイミー」「あおくんときいろちゃん」「フレデリック」など
どれも人気が高い絵本が多く、
表紙がポスター化されるなど、おしゃれな絵のアーティストとして知られています。
残念ながらレオーニさんは 1999 年に 90 歳で亡くなられましたが
その翌年の 2000 年に発行されたのがこの「いろいろ1ねん」です。
主人公は、表紙にも出てくる双子のネズミたち。
この切り絵ならではのやわらかいタッチがいいですよね。
1年をめぐるというこの絵本。
はじまりは、今と同じ「1月」からです。それも 1 月1日の元旦から。
双子のネズミたち「ウィリー」と「ウィニー」は、
生まれてはじめて、雪の降る真っ白な世界を歩きます。
そして出会うのが
誰がつくったのか、大きな「ゆきねずみ」(=おそらく雪だるまのネズミ版でしょう)です。
「ごらんよ、ゆきねずみだ!」ウィリーがいった。
「ほうきを もっているわ」ウィニーがいった。
ところが、こえがきこえたんだ。
「ほうきじゃないわ、わたしはウッディ、木よ!」
そう、この「ウッディ」との1年を、この絵本は描いていきます。
詩人・谷川俊太郎さんの小気味よい翻訳もいいですよね。
2月になると、「ゆきねずみ」はすっかり溶けてしまって、
そこには「ウッディ」が立っていました。
ネズミたちとウッディは、お互いのことをたくさん話して、仲良くなります。
そうして、毎月毎月、この「木」とネズミたちの日々が
カレンダーのように、綴られていきます。
レオ・レオーニさんが過ごしたイタリアの気候を描いているのか、
少し日本の四季とはちょっと違うような月もありますが、
毎月、毎月、ページをめくるごとに
ウッディとネズミたちの毎日は変化していきます。
4月になれば、ウッディには緑が芽吹きます。
季節がめぐり秋になりました。
ウッディには鮮やかな色の実がたくさん!
葉っぱを茂らせ、花を咲かせ、実を結び、冬を迎える。
そんな植物の1年を描きながらも、
ウッディ、ウィリー、ウィニーたちの細やかな心情の変化も
シンプルな言葉で表現されていて、
そこが何となく心を打つ理由じゃないかなと思います。
気がつけば、読んでいるあなた自身も、仲間になったような気分で
1年間が過ぎていくのです。
さぁ、いよいよ、新しい1年。
誰にとっても「まっさらの」1年がはじまりました。
この本の英語での原題は「A Busy Year」です。
そのまま訳せば「忙しい一年」となりますが、
谷川俊太郎さんが訳したのは「いろいろ1ねん」。
季節のいろいろな変化を忙しさの中に無くさないで欲しいという気持ちが
そこに隠されているような気がしています。
素敵な絵本を手にすると、気持ちまでも晴れやかに、前向きになります。
季節の変化や1日1日を大事に過ごしていきましょ う。
そして、皆様にとって、今年も素敵な1年になりますように。
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