『つみきのいえ』
加藤久仁生 絵/平田研也 絵
白泉社
こんにちは。久保です。
たくさん絵本を読んでいますと、
絵本にもいくつかの種類があるなぁと思います。
●空想の楽しい世界に連れて行ってくれるもの
●知らない世界、知らない国や、その生活を見せてくれるもの
●自然や動物、植物について、やさしく教えてくれるもの
●昔から伝わる、みんな大好きなおはなし
●お話しから、教訓やいましめを学べるもの
特別な操作も、機械も必要とせず
お子さんでも読めるやさしいことばで
日常のなかでは経験することのできない、
さまざまな世界に連れていってくれるのが
「絵本」のすばらしいところじゃないかと思うのです。
そして、また、「誰かの気持ちになってみる」絵本も
最近は増えて来たなぁと思います。
そのひとつの例が、今回ご紹介する「つみきのいえ」です。
この絵本では「年をとる」という体験を
ファンタジックな絵と、素敵なおはなしで教えてくれます。
じつはこのおはなし。
最初はアニメ映画として発表されたものだそうです。
日本のクリエイターが2008年に制作。
「La maison en petits cubes」というフランス語のタイトルで発表し
第81回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞。
その後、現在までに14の賞を受賞するなど
世界各地で多くの人の心に感動を与えているそう。
その映画をもとに
ご本人たちが絵本に仕立て直したものです。
ではページをめくってみましょう。
主人公はおじいちゃん。
海に囲まれた小さな家に住んでいます。
その家はなんと、水のなかに積み木を重ねたように建っています。
長い時間をかけて
街の水位が、少しずつあがっているため
どんどん、上へ、上へと、家をつぎたして暮らしてきたもよう。
いったい今は、何階建てなのでしょうか?
でも、そんな風変りな世界でも、
おじいちゃんはひとり、楽しく暮らしています。
ゆっくりと流れる、
静かな時間。
しかし、ある日事件が起こります。
家を上へ継ぎ足す作業が間に合わず
大切な大工道具ごと家が水の中に沈んでしまいました。
そこで、おじいさんは潜水服に身を包み、
水の中にある、下の階へと降りて行きます。
そこで、おじいちゃんが見つけたのは、
亡くなったおばあちゃんと一緒に
暮らしていた時の「部屋」。
懐かしい昔の思い出に包まれたおじいちゃんは
もっと下の「部屋」に降りてみたくなります・・・。
子どもたちと暮らした日々、
結婚した日々・・・
おじいちゃんの思い出に寄り添って
ページをめくるうちに、
「年をとること」そして「生きていくこと」について
考えさせてくれます。
とってもやさしくて、
とっても愛おしい一冊ですが
その反面、現実を見せてくれる本でもあります
子どもたちに、「年をとる」ことを
知ってもらう機会として
そしてまた、自分自身の人生を考える時間として
ゆっくりとページをめくりたい一冊です。
やわらかいタッチの表紙もいいですね。
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