Sep 01, 2017 絵本コラム

[絵本27]命の大切さをやさしく伝える

『あったかいな』
くすのきしげのり 作
片山健 絵
あかつき

人気の絵本作家、
くすのきしげのりさんを知ったのは
2016年に参加した、本に関するイベントでした。
壇上で自作について話すくすのきさんの第一印象は
「関西弁のパワフルなおじさん」というイメージ。

でも、書かれた絵本に触れると
どれもが「ホロっと」くるのです。

子どもの頃に失ってしまった、
あのころの感情をふと思い出させてくれる。
そんな絵本をたくさん書かれています。

ぼくは広島出身なので、関西弁はネイティブではありませんが
くすのきさんの絵本に出てくる言葉の多くは関西弁。
それがまたいいんですよね。
関西弁の言葉が、心の壁をつきぬけてストレートに響いてくるというか。
何冊かを手に取って、すっかり
くすのきさんの絵本のファンになりました。

しかも、面白いのは、絵は別の作家さんですので
同じ、くすのきさん風味の絵本でありながら、
さまざまな絵も楽しめるということです。

絵の作者を挙げてみますと・・・
いもとようこ、伊藤秀男、片山健、さこももみ、こうの史代、
吉田尚令、松本春野、石井聖岳、たるいしまこ、狩野富貴子、
鈴木永子、ふるしょうようこ、等々・・・。

絵本作家として有名な人もいれば、
イラストレーターや漫画家など、
絵本の世界では見かけない名前もあったり、
同じ「くすのき節」でも、さまざまなタッチの絵本が見られるのも特徴ですね。

さて、今回は、そんな「くすのきしげのり」さんの作品の中から
一冊ご紹介します。「あったかいな」です。

この本は、「命の大切さ」を教えてくれる本です。
最近は、生きている動物や魚に触れることができる環境が
遠くなったためか、「命の大切さ」を教える本が多いですよね。
それはとても重要なことです。

ただ、中には「死を通して、命の重さを伝える本」もあります。
そういった本もとても大切ですが、小さなお子さんに読ませるには
「まだ段階を見たいな」という方も多いかもしれません。

この「あったかいな」という絵本には、
「死」というものは出て来ません。

表紙をめくると、こんなメッセージがあります。

ねこのミーちゃんが、もうすぐ
あかちゃんを うむ。
ミーちゃんは おかあさんに
なるんや・・・。

最後の「なるんや」が関西弁なのです。
やさしい雰囲気でしょう。

まず、登場するのは二人の女の子。
この会話も関西弁です。

この猫がミーちゃん。
ふたりは、ミーちゃんがいつ子どもを生むのか、
気になって気になってしかたがありません。

ミーちゃんが、子どもを産むための場所を
ダンボール箱で用意しながらそわそわしています。

そして、三匹の子猫が生まれます。
ふたりは、子猫に手を伸ばしますが、
ここで意外なことが起こります。
お母さんとなったミーちゃんが
怒ってそれを拒絶するのです。

そして、その後のこの女の子たちの反応が
なんとも、かわいいというか、愛おしいんです。
ぜひ、本を手にとって、どんな反応が起こったのか
読んで欲しいと思います。

後日、やっと子猫をさわらせてもらえたふたり。
「ふわふわしてる」
「こねこって、あったかいなぁ」

お母さんがいて、自分がいる。
お父さんがいて、自分がいる。
そのことを小さなお子さんにも
やんわりと教えてくれる、素敵な絵本だと思います。

 

Sep 01, 2017 絵本コラム