Feb 01, 2016 絵本コラム

[絵本8] 「おおかみきぶん」の妹を、お姉さんの愛がやさしく包む

『きょうは、おおかみ』
キョウ・マクレア 文
イザベル・アーセノー 絵
小島明子 訳
きじとら出版

[絵本]さるのせんせいとへびのかんごふさん画像1

こんにちは。久保です。
今月も素敵な絵本をご紹介します。

「人と木」さんも、ぼくも、活動の基盤は「広島」です。
海の幸にも山の幸にも恵まれた、住みやすい街だと思います。
そんな広島に、絵本の出版社さんがあるのをご存じですか?

それは「きじとら出版」さんという、かわいらしい名前の出版社です。
現在まで4冊の翻訳絵本を出版されておられます。
※2月末に5冊目を発行される予定です。詳しくは公式サイトへ。

代表は、翻訳家の小島明子さん。
2014年2月、翻訳絵本のコンテストで大賞を受賞され、
その時の課題作品が、今回ご紹介する絵本『きょうは、おおかみ』でした。
「深みのあるイラストやお話にすっかり魅了された」にもかかわらず
国内での出版の話はなかなか進まない状況だったそうです。

そこで小島さんは、その年のうちに自ら出版社を立ち上げ、
翌年の2015年にこの本を出版されました。
素晴らしいバイタリティだと思います。

そんなエピソードを持った、カナダ生まれの絵本。
『きょうは、おおかみ』を今月はご紹介します。

[絵本]さるのせんせいとへびのかんごふさん画像1

登場するのは、お姉さんのバネッサと、妹のバージニアの姉妹。
ある日、目覚めたバージニアは「おおかみみたいに むしゃくしゃ」したきぶん。

「ぐるるる、がるるる」と、お姉さんのバネッサを困らせます。
バネッサお気に入りの黄色い服も「やなかんじ」とバッサリ。
お友達にも、
さえずる小鳥にも噛みつきます。

どうしたら、げんきになってくれるんだろう。

そんな姉の心配もむなしく、
妹はついに「ほっといて!」と
黙り込んでしまいます。

お姉さんは、それでも考え続けます。
「なにか きっと あるはずよ、あかるい きもちに なれること」

すると、おおかみバージニアは一言。
「このそらを とんでいけたら いいかもね」

そしてお姉さんは思いつきます。
妹にとって満足できる「せかい」をつくることを・・・。

(素敵な結末ですが、秘密にしておきます)

[絵本]さるのせんせいとへびのかんごふさん画像1

なんといっても絵が素敵です。
そのまま飾ったり、雑貨にでもしたい雰囲気です。

優しい印象の手描きのイラストや文字。
そして淡い水彩調の色。
最近、欧米では若い人たちを中心に
こういった雰囲気のアートが人気ですが
それが絵本になった作品は
日本ではまだ少ないと思います。
いつもの絵本に慣れたお子さんもきっと驚くでしょう。

そしてまた、どんなにわがままをされてもくじけずに
妹の気持ちを考え続ける、お姉さんの妹への愛は、心を打ちます。
ぼくにも妹がいますが、もし同じ状況なら、
ほったらかしにして遊びに行くでしょう(笑)

相手を想う、相手に寄り添う。
そんな空気感を伝えてくれる絵本です。

[絵本]さるのせんせいとへびのかんごふさん画像1

インテリアとして飾るのもいいですね。
妹さんが生まれたご家庭に
ギフトとして贈るのもよいかもしれません。

素敵な絵本と一緒に、
素敵な時間をお過ごしください。

Feb 01, 2016 絵本コラム