『ボタンちゃん』
小川洋子 作
岡田千晶 絵
PHP 研究所
昨年のことですが、
書店の絵本コーナーで、ある日この絵本をみかけました。
「小川洋子 初の絵本」と書かれています。
小川洋子さんといえば、芥川賞や谷崎潤一郎賞を受賞するなど
小説家として人気のある方ですよね。
心にじわっと響いてくる作品が多いと思います。
もしかしたら、日曜朝に放送されている
「本を紹介する」FM番組のパーソナリティとして
ご存じの方も多いかもしれません。
あれを聞くとついつい本を買ってしまいます(笑)
さて、絵本売り場で「あの、小川洋子さんが絵本をつくったのか」と
ふと手に取ってみましたら、帯にはこんな文字がさらにありました。
「子どものころ、はじめて考えた物語」と左の円のなかにあります。
するとつまり、これは小説家小川洋子さんの原点となる作品かもしれません。
そして、実際に読んでみると、これがまた心にしみる
小川さんらしい「絵本」でした。
岡田千晶さんの淡くてやわらかい絵も見事にマッチしています。
主人公は、こちら。
洋服についているボタンの「ボタンちゃん」です。
かわいいようで、ちょっと不気味感もあるのが面白いところです。
ボタンちゃんは、アンナちゃんという女の子のブラウスについています。
いい雰囲気ですよね、岡田千晶さんのこの絵。調べてみたら、
以前にご紹介した『あかり』(23 回)も岡田千晶さんの絵でした。
話は脱線しますが、絵本には文章を書く人と、絵を描く人がいて
同じ人が両方を手掛けることもありますが、別々の人が担当することもあります。
絵本を探していく場合、好きなイラストレーターの絵本を探していくと
作者が変わることで、意外に違った雰囲気の作品もあったりして、
新しい発見があることも多いです。
ですので、絵本を探すとき、絵を描いた人の名前で調べたり、
検索してみたりすると、面白いかもしれませんよ。
さて、『ボタンちゃん』の絵本のお話に戻りますが、
アンナちゃんにとって、このブラウスは、おでかけの時だけに着る
大切なブラウスでした。
だから大事にしまってあるのですが、
ある日、このボタンちゃんが、ブラウスから外れてしまいます。
リズムにのって「コロコロコロ」と転がるボタンちゃん。
見知らぬ世界へと入っていくことに興味津々。
さあ、どんな冒険が始まるのでしょう?
そして、ボタンちゃんは、かつてアンナちゃんが使っていて
今では使われなくなった「服」や「おもちゃ」たちと出会います。
このお話、設定や雰囲気から
最後は悲しい展開になるのかとおもいきや、
カラっと楽しく次の場面に進んでいく内容でした。
やさしい結末にも「愛おしさ」を感じました。
なんとなく力強さというか、前向きな気持ちが伝わってきます。
やはり、小川洋子さんらしい、じわじわっと響いてくる作品でした。
派手さはないものの、何度か読みたくなるような『ボタンちゃん』。
読んだお子さんも、その成長に沿って、
きっと感想が変わっていくだろうなと思うとともに
身近にある「服」や「おもちゃ」に
「愛着を感じてくれたらいいなぁ」と思う絵本でした。
興味をお持ちになりましたら、ぜひ手に取ってみてください。
表紙の裏側にある「見返し」のイラストもかわいくて、素敵です。
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