『かさもって おむかえ』
征矢 清 文
長 新太 絵
福音館書店
こんにちは。久保です。
6月といえば梅雨の季節。
じめじめして、いやな季節ですが
農作物や草花など、成長する植物たちにとっては大切な時期です。
雨ばかりの毎日をちょっとだけ楽しくする、
そんな絵本『かさもって おむかえ』をご紹介します。
雨の日に、お子さんがドキドキしながら傘を持って
お父さんを駅へ「おむかえ」に行くというテーマでは
太田宗八さんの『かさ』という名作絵本もあります。
そちらは、文字を排し、モノクロの世界に赤い傘の動きで
慣れない駅への道すがらの心細さを表現するという
素敵な作品でしたが(機会があればこちらも読んでみてください)、
この『かさもって おむかえ』は 、色彩も豊かで
どうぶつたちも登場する楽しい作品です。
1969年に発行されたロングセラー絵本なので
子どもの頃に読んだ記憶があるお母さん・お父さんもいらっしゃるかも。
人気の高い長新太さんが絵を担当し『ガラスのうま』などの児童文学で有名な
征矢(そや)清さんが文章を書いています。
主人公は、おかっぱの女の子「かおる」ちゃん。
自作(?)の「あめふりのうた」を口ずさみながら
駅のホームでお父さんが降りてくるのを待っています。
お父さんの大きな傘をぎゅっと握りしめています。
今のように携帯電話やLINEなどがない時代の「おむかえ」は、
相手がいつ降りてくるのかがわかりません。
ただひたすら、じっと待つしかありませんでした。
みなさんもそんな思い出をお持ちではないでしょうか?
ぼくも小さい頃、父の会社の正門前の交差点で
じっと父を待っていた経験があります。
門から出てくる集団が見えるたびに
「お父さんはどこかな?」と探すのですが
なかなか見つかりません。
最初ははりきって、じっと人々の顔を見ているのですが
何度も集団を見送り時間が経っていくと
だんだんそれにも飽きて
「本当に合えるのかな?」と不安になったものです。
この絵本の「かおるちゃん」も
電車を6台、7台見送った後、
待ちくたびれてベンチに座りました。
すっかり日が暮れて
ホームにはだれもいなくなりました。
すると、オレンジ色のトラねこがやってきて、
「お父さんの乗り換えの駅まで行こう」と誘います。
ドキドキしながら「かおる」がねこについていくと
そこには、いつもの電車とは違う緑色の車両。
おそるおそる乗り込むとたくさんのどうぶつたちが・・・。
謎のどうぶつ専用列車でお父さんのいる駅へ向かうのでした。
最後には、ちゃんとお父さんと会えるのですが、
「おむかえ」を通して、
ドキドキしたり、ハラハラしたり、
そんな疑似体験を、
読み聞かせで感じてもらえる絵本だと思います。
カラフルな色彩や、主人公や人の描写を控えめにした絵も
イマジネーションを広げてくれるでしょう。
梅雨の季節、楽しい時間を絵本といっしょにお過ごしください。
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