『およげないさかな』
せなけいこ著
ポプラ社
こんにちは。
今年は梅雨が長引いたり、台風が並んでやってきたりと
なかなか天候に恵まれませんでしたが、
いよいよ、やっと夏らしい毎日が始まりそうですね。
そこで今回は、夏らしい絵本を取り上げてみようと
最初は『おばけのてんぷら』など、おばけの絵本を考えていました。
せなけいこさんの特徴あるイラストで、今でも大人気の絵本です。
ネットで調べて見ましたら、
その『おばけのてんぷら』をスタートとする「めがねうさぎシリーズ」は
なんと今年で 40 周年を迎えたそうです。
当時 4~5 歳だった子どもたちは、もう 44~45 歳になるというわけで、
まさに、世代を超えて愛される絵本といえますね。
その、せなけいこさんの新作絵本が 2015 年 7 月に出るということを知り
さっそく読んでみましたら、とてもすてきな絵本でしたので
予定を変更して、この新作『およげないさかな』をご紹介します。
この絵本、まず目を惹くのは白地に黒い線と赤い魚だけの
シンプルなデザイン。本の中のページも、この色合いです。
色が少ない分、想像力を湧きたてられる気がします。
しかも、写真ではわかりにくいのですが
アミになっている部分は、印刷の質感も変わっていて
手触りも楽しい絵本でした。冷蔵庫で冷やして
冷たい紙面を触りながら読むのもいいかも。
お話しも、心に残ります。
主人公は海の底に住む、赤いさかな。
ほかのさかなは泳げるのに、彼だけは泳げずに悩んでいます。
泳げないので、這って進むうちに
浜辺にたどりつき、そこで人間の男の子と出会います。
「ぼくおよげないんだ」
「ぼくもだ」
泳げない同士の一人と一匹は
なんと、スイミングスクールに通って泳ぎを練習します。
すると、プールサイドを歩いていた子猫がプールに落ちて
さかなは助けようとします。
そして気が付くと・・・。
・・・とまあ、ちょっとコミカルなお話です。
「およげない」というネガティブな想いを
まわりの仲間が決して否定せずに、
また、手を出さずに、本人たちの奮闘を見守っている。
そのやさしい佇まいを感じる絵本です。
私事になるけれど、ぼくは子どもの頃、泳ぎが大の苦手で
無理矢理スイミングスクールに連れて行かれまして
「いやだいやだ」と騒いでいたところ
先生に、水の中にぽちゃんと投げ込まれました。
必死にどうにかしようと手足をバタバタしていましたら
気が付いたら「犬かき」みたいな方法で泳いでいました。
その時は本当にうれしかったですね。
そして、ああ、投げ込まれたのは「がんばれ!」と伝えたい愛情だったんだと。
大人になってから気づくわけですが・・・。
その時と同じように、この絵本からは無我夢中で頑張っていると
出来ないことが出来るようになる・・・という
やさしい気持ちを感じるのでした。
いよいよ夏休み。
素敵な絵本との出会いで、
皆様の夏の思い出が増えますように。
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